家を守るPart２ ～命と健康と家と農～

今日で作業所は仕事納め。昨年のように、大掃除をやってから全員でビンゴ大会という流れだ。
どうも新型コロナのクラスターが起きていたらしく、あの週は結局ずっと作業所が閉鎖されていたが、仕事納めには顔ぶれがほぼ戻ってきた。
普段は別フロアにいる移行支援のメンバーも集まってビンゴカードが各々に手渡される。スタッフによる数字の読み上げが粛々と始まった。一つ読み上げるたびに誰かしら反応があるのが面白い。
今回のビンゴは当たる人と当たらない人の偏りが大きく、最初に数字を振り返るところまででゼロという人もいたようだ。僕は逆に順調に穴を開けていくことができて、二番目くらいにビンゴを達成した。
今回の景品は男女で分けられていて、男である僕は青いリボンのかかったプレゼントから一つを選びだす。僕の場合は選び放題だった。いくつか触って確かめて一つの包みを取り、お菓子とジュースの袋を渡されて自分の席へ。
ビンゴを達成した後は手持ち無沙汰で、ゆっくり身支度を整えながら進行を静かに見守った。なかなか数字を開けられなかった最後の一人にも景品が行き届いてビンゴが終わる。その後、理事長によるありがたい挨拶があってもまだ、予定の終了時刻よりかなり早かった。
洗車に出た車がまだ戻らないとのことで、車を待つ間、フロアではもらった景品のお披露目会が始まる。すぐそばにいたポンコツくんのは、アイマスクとPC用のぺんだったらしく、かなり微妙。女性スタッフのは、もこもこ靴下やあったか靴下のようなのが多くて、珍しく若い嬌声が上がっていた。
触って選んだ僕のは、マウスウォッシュとアイマスクとあったか靴下。ちなみにマウスウォッシュは去年と同じもので、もしかしたら、という確信があって本当にそうだった。この中では靴下がやはり一番使えるだろう。僕の景品はかなり良かったと言える。
理事長の挨拶によれば、作業所の今年の売上は過去最高だった、とのこと。僕自身を振り返っても、とにかく安定して通うことができて、仕事の出来に関してもそれなりに手応えを感じていた。何よりも病み上がりではなくなって、ほとんどの日常動作を普通にできるようになったことで自信を深められたのが大きい。
上出来の一年。いや、出来過ぎの一年と言うべきか。
これは、と思うようなことがなかったわけではないけど、作業所に通う分にはほとんどストレスがなかった。こんな経験は初めてだ。いつの間にか、僕の生活になくてはならない場所になっていた。
家にいても、時々メンバーのことを思うことがある。例えば、今日すぐそばにいたポンコツくん。
普段は本当に理解できない行動が多くて、スタッフも対応に手を焼いている。陰と陽がどうとか、お父さんを復活させるとか、性別がそのうちなくなるとか、妙に宗教的、カルト的。集中力がないし、よく叫ぶし、別の知的の女の子に対して卑猥な言葉を投げて叱られるし、どうしようもないポンコツ。だけど誰よりも手先が器用で、箱折だけなら多分、僕よりも早い。今日だって朝、僕のいつもいる席を占拠して何をやってるかと思ったら、お絵描きをしていた。見本の女の子を描いたら、そこに「よいお年を」と吹き出しを書き加えていた。なんてピュアな。
そういうところがあるから、ポンコツでも憎めない。ここにいる知的障害の子は、全員にどこかそういうところがある。だから、時には対応に困るようなことがあっても嫌になったりはしない。今ではむしろ、こういう人が混じっているのが当たり前とすら思えるようになった。
彼がいると何かと騒がしいけど、彼がいないと寂しくて物足りない。今日のビンゴだって、すぐそばで彼が大袈裟なリアクションをする姿が滑稽でいじらしかった。他人からも、全力で楽しんでいるのが分かる。他の知的障害の子もそうだった。まさにこどものような純粋さが、僕の心の中にじわりと浸み渡る。
出来る人も、出来ない人もいるからこその作業所。出来ないことを出来る人がどうカバーするか、考えたり指示を出すのがここのスタッフ。それらが全て噛み合ったから、良い雰囲気もできているのだろう。
仕事納めの風景を見て、特に納得した。作業所はこれから年末年始を挟んで一週間閉じられるが、来年5日には再開する。みんなと会える。
来年もまた、みんなの元気な姿をぜひ見たいものだ。