物語の終わりと始まり 7冊目
2025年02月07日
今季最強、最長寒波の襲来によって思わぬ大雪になったその直前に7冊目を仕上げた。今度は残り1ページだったので感傷に浸る余裕もあった。
スタッフに完了報告をしたらすぐに次の本を手渡された。淡々と、黙々と、打ち込みに励むだけだ。
今回の本は、今村昌弘氏の「明智恭介の奔走」。全5章で295ページ。156300文字余りだった。
前回の終わりが11月下旬なので、2ヶ月程度で仕上げたことになる。PCの時間が多かったのは確かだが、打ち込み速度の向上もあるだろう。
作業所にあるそれぞれのPCの癖に合わせて入力方法を工夫したり、各種のショートカットを併用したり。入力自体はそこまで進歩していないので、セルフの工夫で乗り切るしかない。
7冊目、「明智恭介の奔走」は一見すると探偵もののようだが、実はちょっと違っている。明智恭介は自分の愛するミステリ作品に強い憧れを持つ大学生で、名探偵と言えるようなかっこよさはなく、妙に人間臭い人物として描かれる。
全ての章に明智恭介は登場するものの、最終的に謎を突き止めるのは本人ではない。彼は謎解きのヒントを与えるだけ。一つの章は泥酔して何者かにパンツを切り裂かれてしまうという話だし、最終話に至っては犯人を捕まえるクライマックスに本人が立ち会ってすらいない。
はっきり言って、かっこ悪い。だが、そこが面白い。
本作は偶然の要素がかなり強くて、論理だけでは真相にたどり着くのが困難だ。だから展開が二転三転するものの、彼の行動や直感が最終的な解決に結びついていく。彼がいなかったら、どれも中途半端な結末に終わってしまうだろう。明智恭介はそういう存在。
自らが目指す名探偵とは程遠く、いつものように失敗を繰り返しながらも、それらの失敗を糧にして成長していく姿にほっこりする。
本作はどうやら、この先に起きるもっと大きな事件に立ち向かう彼の原点を描いたものらしい。探偵としての素質はありながら、まだ磨かれていない感じが初々しくて良い。
明智恭介シリーズの他の作品もぜひ読んでみたいと思わせる、良作だった。
兎にも角にも一つの物語が終わって、また次の本の扉を開く。
今度は雰囲気がガラリと変わっているのが触りで分かる。どんな熱い展開になるのか、今から楽しみだ。